空き家と向き合う 1

 国の空き家は、846万戸。

なんと7戸に1戸が空き家。 有効に活用したいですね!

あなたのまちは、大丈夫ですか!?

廃虚マンション、強制解体に1億円

狭いところで機会が入らず手作業 広島県 尾道市.png
狭いところで機会が入らず手作業 広島県 尾道市.png

                                                                                          日本経済新聞   2019/10/29 

 「箱庭的都市」と呼ばれ、路地に寺社や民家がひしめく広島県尾道市。8月上旬、観光主要ルート「古寺めぐりコース」沿いの一角で、朽ちた木造2階建て民家(延べ床面積約83平方メートル)の解体作業が進んでいた。

民家への通路は人が2人並んで歩けるだけの幅しかなく、背後にはJR山陽本線が走る。大型重機を使えないため、バールなどで家屋を壊し、がれきを運び出す。「10年以上、いつ崩れるかとひやひやしていた。やっと壊してくれた」。近隣に住む80代女性が胸をなで下ろした。

 解体は「倒壊で住民や隣接するJR線に多大な被害を及ぼす可能性がある」と判断した尾道市が、是正指導や勧告に従わない所有者に代わって強制的に実施した。投じた費用は460万円。所有者側から回収できる見込みはほとんどない。

登記簿上の建物所有者は死亡し、法定相続人も相続を放棄。建物と土地の所有者が異なるため、土地処分による回収もできない。市長の平谷祐宏(66)は「私有財産の処分に税金を投入するのはおかしいが、倒壊した際の影響の大きさを考えると、やむを得なかった」と苦虫をかみつぶす。

全国の空き家は846万戸。総住宅数に占める割合は一貫して増え続け、いまや7戸に1戸が空き家だ。このうち一戸建ては38%、共同住宅が56%を占める。

放置された空き家が周囲に悪影響を及ぼすことを防ぐため、国は2015年に空き家対策特別措置法を施行。危険を伴う場合などに、自治体が強制的に取り壊す代執行をしやすくした。

ただ18年度末までに助言・指導、勧告に至った計1万6500件に対し、代執行に踏み切ったのはわずか1%。解体費用の回収が容易ではなく、自治体は二の足を踏む。

琵琶湖南岸に位置する京阪神のベッドタウン、滋賀県野洲市では、分譲マンション(鉄骨3階建て、全9戸)が廃虚と化し、11月中旬にも市によって取り壊される。解体費用は1億円に上る見込みだ。

市長の山仲善彰(68)は「全額を区分所有者から回収するよう手続きを粛々と進める。税金で賄うことは一切想定していない」と強調する。一方、区分所有者の一人は「解体費がマンション購入費を大きく上回ることになり、とても払いきれない。自主的な解体も模索したが、連絡の取れない所有者がいて合意すら取れない」と頭を抱える。

1972年に建てられたこのマンションには、管理組合がなく、2013年には腐食した3階の手すりが地上まで垂れ下がったほか、18年の大阪北部地震で側壁が崩れ落ちた。今夏も雨の影響で側壁が再び崩れ、隣接する小川に部材が散乱するなど危険な状態が続く。

区分所有者の男性は「迷惑をかけているのは申し訳ない」と話す一方、重ねてこう強調した。「今となれば定期的に修繕しておけばよかったと思うが、購入当時、マンションを管理するなんて発想は、誰にもなかった」

国の調査によると、所有者が不明、もしくは連絡の取れない空室があるマンションの割合は全体の3.9%。総戸数に対し所在不明・連絡先不通の住戸が2割を超えるマンションも2.2%ある。築40年超のマンションはおよそ20年後、現在の4.5倍の367万戸に達する。

「戸建て同様、分譲マンションの空き家問題は全国どこでも発生する可能性がある」。野洲市長の山仲が警鐘を鳴らす。

廃虚マンションの発生をどう防ぐか。東京都は20年4月から、1983年以前に建てられたマンションについて管理状況の届け出を義務付ける。都内マンションの4分の1にあたる1万4000棟が対象だ。老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」に対応する狙いだ。

届け出によって備えが不十分なマンションを把握できるほか、届け出すら無い場合はより危険度が高い恐れがある。マンション課長の飯塚睦樹(49)は気を引き締める。「野洲市の例は決して人ごとではない。届け出義務化によって、管理不全の兆候を着実に見つけていく」(敬称略)

 

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全国で空き家問題の深刻度が増している。管理不全を避け、「負債」となった不動産の価値を取り戻す取り組みを探る。