IT大手 独禁法で個人情報規制 購買・位置データも対象  公取委指針案

     日本経済新聞 朝刊

 不適切なら改善命令

 

 プラットフォーマーと呼ばれるIT(情報技術)大手による個人データの不適切な収集・利用を防ぐため、公正取引委員会が検討している規制の指針案が16日、わかった。サイトでの購買履歴や位置情報を含め、個人データを同意なく利用すると独占禁止法の「優越的地位の乱用」にあたると示す。不適切な場合は改善命令を出し、支配力を高めるIT大手から個人を守る仕組みをめざす。

 指針は米グーグルや米アップルといった「GAFA」などプラットフォーマーを念頭に置く。IT大手によるデータの寡占が進むなか、欧米を中心に個人情報を保護する動きが強まっている。日本も2018年12月に基本方針を示し、公取委が具体的な運営指針の作成を進めていた。

 公取委は個人データには経済的な価値があるとし、企業向けに活用してきた独禁法を個人向けにも適用する。独禁法は強い立場を利用して取引相手に不利な条件をのませることを「優越的地位の乱用」として禁じている。

 指針ではまず、どんな企業の場合が「優越的な地位」にあたるかを整理した。ネットモールや検索などで、ほかに代替可能なサービスが存在しないか、あっても簡単には乗り換えられない場合を挙げた。

 「乱用」の具体例も示した。プラットフォーマーが利用目的を知らせず利用者に個人データを提出させたりすることを指す。個人情報の取り扱いに関する規約を明らかにしていても、長文で専門用語が多く利用者が理解しづらい場合は違反にあたるとした。

 指針案では対象とするデータを「消費者個人と関係する全ての情報」と明記した。住所や氏名だけでなく、サイトの閲覧や購買の履歴、位置情報も当てはまる。こうしたデータは個人の嗜好に沿って効率を高める「ターゲティング広告」などでIT大手にとって利用価値が大きい。

 独禁法違反と判断した場合、「排除措置命令」と呼ぶ改善命令を出す。違反行為をやめさせて再発防止策を求めるほか、課徴金を課すことも検討する。月内にも最終案を公表し、意見を公募した後に運用を始める。

 欧州連合(EU)は個人情報を強く保護する一般データ保護規則(GDPR)を導入するなど、海外で規制が強まっている。ドイツ当局は2月、フェイスブックによる利用者からのデータ収集を「支配的地位の乱用にあたる」と判断した。フェイスブックの個人情報の不正流用では、米連邦取引委員会(FTC)が50億ドル(約5400億円)の制裁金を科す方針だ。

 

 日本も従来ある個人情報保護法だけでは不十分とみて対応を急ぐが、指針の運用では課題もある。例えばあるIT大手について「代替サービスがない」ことの証明は難航が予想され、優越的地位の判断ができないと対策は進まない。欧州のようなデータ経済の広がりに応じた法制度も十分とはいえない。個人情報の乱用を防ぐ実効性をどう確保するかが問われる。 

 

 個人情報の乱用は、何としても防ぎたいところですね、『遅きに失する』にならぬように実効性の確保を急ぎたいですね!