6次産業化の市民農園

 一次産業であった農業が6次産業になりつつありますね!

生産をする農場から体験をする農場へ!

都市化が進み、農業の生産過程を身近に感じられなくなった地域に住む人たちには、農業体験と土いじりが、新鮮な体験でしょう。これからも子供連れの若い世帯での農業体験の需要は増えていくことでしょう。

 市民農園、都心で手軽に サービス充実 レジャー感覚 

 現役世代やファミリー層も取り込む

2019/4/13 情報元 日本経済新聞 電子版
30~40代の会社員の利用が多い(東京都小金井市のポモナ)
30~40代の会社員の利用が多い(東京都小金井市のポモナ)

 農業体験がレジャー感覚で手軽にできる「市民農園」が都市近郊で広がってきた。手ぶらで参加できる農園やクラブハウスを備えたところも登場。シニア層に加え、現役世代やファミリー層もひき付けている。背景には、農園開設の主役が農地を区割りして貸し出すだけの自治体から、サービスを充実させた民間に代わってきたことがある。

「畑仕事は生活サイクルの一部ですね」。都内で週末、農作業に汗を流すのは会社員の十時靖至さん(45)。ポカポカ陽気だった4月上旬の日曜、小金井市内の市民農園「POMONA(ポモナ)」まで車で出かけ、夏に収穫するトウモロコシの種まきをした。夫婦で通って4年目になる。

この農園を選ぶ決め手となったのは、手厚いサービス。農作業に使うスコップや長靴、種や肥料など必要なものは全て農園側が準備しており、手ぶらで来られる。設備も充実している。15台とめられる駐車場のほか、休憩できるカフェやシャワー室もあるクラブハウスを併設する。枯らす心配もない。種まきから収穫まで農家の園主のサポートを受けられるからだ。「初心者の自分でも無理なく続けられる」(十時さん)

ポモナは地元農家の横山喜和さん(43)が2013年に開設した。料金は約6平方メートル(4畳分)で月7500円から。近隣にある自治体開設の市民農園と比べると10倍以上と高いが、サービスを充実させれば「泥で汚れる農業のイメージも薄れ、初心者でも始められる」と園主の横山さんは話す。利用者は週末にしか畑へ来られない30~40代の会社員など現役世代が多い。

レジャー施設並みのサービスを提供する農園も出てきた。民間企業アグリメディア(東京・新宿)は16年、都市近郊の市民農園「アグリパーク伊勢原」(神奈川県伊勢原市)を開いた。約1万5千平方メートルある園内には貸農園のほか、バーベキュー場やヤギなどと触れ合えるスペースを併設。近くの温泉の入浴割引も付く。「キャンプ場へ遊びに行くレジャー感覚で利用してもらっている」(同園の松本卓也マネージャー)。料金は栽培サポート付きの5平方メートルで月8600円から。希望すれば農園側で収穫や発送も代行する。

農林水産省によると、市民農園は全国で4165カ所を数える(18年3月末)。うち農家や企業開設のサービス付き農園は4割。企業などによる開設が認められた05年以降、約5倍に急増した。貸農園サービスなどを手掛ける農天気(東京都国立市)の小野淳代表は「シニア世代だけでなく、働きながら農業体験をしたい現役世代のニーズを取り込んだ」と分析する。

 

    一方、全体の6割を占める自治体や地元農協の開設は減少傾向にある。農地を区割りして貸し出すだけで道具もトイレもなく、「利用者離れによる閉園も増えてきた」(農水省の担当者)。

立地も郊外から都心へ近づき始めた。現在7割が郊外にあるが、18年秋の法改正で都市部にある農地を貸し出しやすくなった。マイファーム(京都市)は都会の利用者を呼び込みやすいより身近な立地が可能になったとみて、東京23区や大阪市内などでの開設を急ぐ。

「都会暮らしをしながら農園満喫」の夢が一歩近づくかもしれない。

 

  ■住民参加型の都市農園、海外では貧困者支援に活用

 住民参加型の農園をつくる動きは世界で進む。都市部に農地がほぼなかった欧米では、行政が後押しして工場跡地などを活用、野菜などを生産する農園ができている。支えるのは、地域住民のボランティアやNPOだ。
 ロンドンでは12年の五輪開催をきっかけに急増した。19年4月で約2800カ所にのぼる。都市住民に野菜を販売した収入をもとに運営、貧困層に新鮮な食材を無償で提供する。ニューヨークも同様だ。一方、アジアでは香港などで高価格が狙える採れたて野菜の供給を狙ったビジネスも動き出している。
 都市農業に詳しい東大工学部の横張真教授は「農業では協働が必要になる。農園は生産拠点というより地域コミュニティーづくりの中核として役立てられている」と指摘する。移民など都市へ流入する人口が増加する中、癒やしを求めるだけではない、都市農業に挑む姿が海外にはある。(高野馨太)