ホーキング博士死去 宇宙理論、子供も魅了

2012年8月、ロンドン・パラリンピック開会式に登場したホーキング博士=ロイター
2012年8月、ロンドン・パラリンピック開会式に登場したホーキング博士=ロイター

現代の技術で3万年を20年で到達する『ナノクラフト』を開発発表時のコメントで人類が宇宙人と接触するのは危険というのがホーキング博士の持論、仮に生命体を見つけた場合は「向こうがわれわれを見つけないことを祈る」とのべた。

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    2018/3/15付 情報元 日本経済新聞朝刊

英ケンブリッジ大のスティーブン・ホーキング博士が亡くなった。難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘いながら、独創的な宇宙理論を打ち出し、分かりやすい表現で書かれた入門書は多くの子供たちを科学のとりこにした。14日の訃報を受けて、人柄をしのぶ声が国内でも広がった。

「直感とひらめきで宇宙学全般で多大なる功績をのこした。世界にとって大きな損失」。親交が深かった東京大の佐藤勝彦名誉教授(宇宙物理学)は惜しむ。

 2017年7月、英ケンブリッジ大で博士の75歳の誕生日を祝う国際会議で顔を合わせた。合成音声でこれまでの研究を振り返り、出席者と議論を交わしていた。佐藤名誉教授は「とても元気な様子で、新たな研究結果を楽しみにしていたのに」と肩を落とした。

 京都大の佐藤文隆名誉教授(宇宙物理学)は1973年、国際学会で訪れた欧州のホテルで初めて朝食を共にし、世間話で盛り上がったという。「研究者としてやるべきことを成し遂げられた人生だったのでは」

 一般読者向けに出版した「ホーキング、宇宙を語る」は1千万部を超える大ベストセラー。博士の別の入門書シリーズの翻訳を手がけた作間由美子さん(70)は「ぎりぎりまで知識を伝えようと奮闘した。多くの子が科学に関心を持つきっかけを作った」とたたえる。

 このシリーズは宇宙を冒険する少年を描きながら、ブラックホールやビッグバンなどの知識を学べる。「幅広い視野を持った博士らしい本。小説が好きな子も、科学が好きな子もひき付けてくれた」と話した。

 日本ALS協会の岡部宏生会長は「難病に負けることなく研究で人々に希望を与え、ALSを世界中に認知させた」と感謝。「博士のおかげで色々な装置や機器が開発された。私たちにとって希望の一つのシンボルだったので本当に残念だ」と悼んだ。

『難病に負けず真理追究』 

 スティーブン・ホーキング博士は宇宙誕生やブラックホールについて真理を追究する一方で一般向けに宇宙論を平易に語る親しみのある存在でもあった。体の自由と声を失っても積極的に活動する姿は学問の枠を超えて世界中の共感を呼んだ。

 学生時代に発表したブラックホールの理論研究で世界的に名を知られるようになった。かつてニュートンもその地位にあった英ケンブリッジ大学ルーカス教授職を1979年から30年務めた。

 最大の業績といわれるブラックホール理論のほかにも、宇宙誕生の瞬間には特別な条件が不要で、その前後を物理理論で説明できるとする「無境界仮説」など革新的な理論を提唱した。宇宙を読み解くのに「神は必要ない」などと発言し、宗教界から反発を受けたこともある。

 活動意欲は衰えず、2016年には地球から最も近い恒星系に超小型探査機を送る米起業家などによる「ブレークスルー・スターショット」プロジェクトに名前を連ねた。最近は人工知能(AI)の将来について「独自の意思を持ち文明を破壊する可能性がある」などと警鐘を鳴らしていた。

(編集委員 吉川和輝)