『次の震災について本当のことを話してみよう』

2018/1/6付 情報元 日本経済新聞 朝刊

  【春 秋】

 正月に事件が起きると、昔の新聞はよく「おとそ気分も吹っ飛んだ」と書いたものである。きのう午前、関東地方などで鳴り響いた緊急地震速報の警報音は久々にこの常套句(じょうとうく)を思い出させてくれた。スマホがいきなり発した強烈なブザー音。あっ、地震だ! いま来る!

▼わずか10秒ほどの間に何ができるか。ただ身構えているうちに時間が過ぎた人も少なくあるまい。どうやら今回は、遠隔地で同時に2つの弱い地震が起きたための「誤作動」だったらしい。なーんだ、人騒がせな、と思うけれど、いつか列島を襲うに違いない巨大地震もこの音から始まるだろう。そのときが、やがて来る。

▼富士山を望む、ある日の東海道新幹線。乗客の携帯が一斉に鳴った。急ブレーキ。激しい衝撃。必死で脱出するも眼前には津波と火災の地獄絵が広がっていた。水も食料も圧倒的に足りず、人々は息絶えていく。福和伸夫・名古屋大教授が近著「次の震災について本当のことを話してみよう。」でこんな情景を描いている。

▼防災学の権威が、あえて悪夢の図を掲げてみせたのは南海トラフ地震への強い危機感ゆえだろう。死者は最悪32万人、日本社会を破滅に追いやりかねないのに、減災の意識と行動が不十分だという嘆きである。正月もまだ6日の話題としては物騒ながら、スマホのブザー音が耳に残るうちに小欄もこれを書いて戒めとする。

*福和伸夫・名古屋大教授は、皆さんの減災の意識を危機感として常に訴えていますね。遠慮しての死者32万人でしょう、南海トラフ、東海地震と連動したら、現状では日本社会の破滅でしょう。

 さぁー 減災対策に危機感をもって急ぎましょう‼