震度6強で3割倒壊

 *建築物の巨大地震の対策は、基本的な合意形成に時間がかかりますね!

しかし、不思議なのは、車はエアーバックが標準装備でついていて人の命が守れれていますが、日本の住宅で最も多い木造住宅では人の命は守られているのでしょうか!? 木造住宅の耐震化は、待ったなしの急務ですね‼

 

都、旧耐震基準の251棟に 恐れ 改修など対策急務


 東京都は3月29日、1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた建築物の耐震診断結果を公表した。震度6強以上の地震で倒壊する危険性が「高い」建物は156棟に上った。危険性が「ある」建物を含めると、調査対象の3割にあたる251棟で倒壊の恐れがある。近い将来の発生が予測される首都直下地震への備えが急務であることが浮き彫りとなった。

 耐震診断結果の公表は2013年11月に施行された改正耐震改修促進法に基づく。旧耐震基準で建てられたホテルや商業施設など不特定多数の人が集まる一定規模以上の施設のほか、災害時に緊急車両が通る道路の沿道建築物などを調査対象とした。古い建築物が多い都内では計852棟が対象となった。

 うち震度6強~7程度の地震で倒壊や崩壊する危険性が「高い」建物は18%の156棟あった。危険性が「ある」建物は11%の95棟。危険性が「高い」もしくは「ある」建物は計251棟に達し、調査対象の29%に上る。危険性が「低い」建物は584棟だった。

 新宿駅東口の顔ともいえる紀伊国屋書店の新宿本店が入る紀伊国屋ビルディングは危険性が「高い」と診断された。1964年の完成で、著名建築家の故前川国男氏が設計したことで知られる。同社は「外観を損なわず耐震補強する方法を検討している」という。

 

努力義務止まり

 

 日本科学技術振興財団が運営する科学技術館は本館や別棟が危険性が「高い」または「ある」と診断された。同財団は18年10月に本館を除く3棟の耐震補強に着工する計画。本館も21年春に改修に着手する予定だ。

 改正耐震改修促進法は施設側に耐震診断の実施や結果報告を義務付けているが、耐震改修などの実施は努力義務にとどまる。ただ商業施設やホテルの場合、改修や建て替えの方針を定めないまま施設名が公表されると、顧客の不安を招くなど悪影響が出かねない。

 このため、今回の診断結果で倒壊の危険性を指摘された施設の中には、耐震改修の計画など今後の対応を併せて示した事業者も少なくない。

 ホテル大手、ニュー・オータニ(東京・千代田)は区分所有する新紀尾井町ビルが倒壊する危険性が「ある」とされた。同ビルはホテルに隣接し、同社は5階で宴会場を運営する。宴会場は改修済みで、他の区域も壁の補強などの工事に年内にも着手する。

 商業施設「渋谷109」が入居する道玄坂共同ビルは危険性が「高い」とされた。渋谷のランドマークだけにテナントからも耐震改修への要望が強く寄せられていたといい、同ビルは昨年12月に設計に着手。19年度に工事に入る予定だ。

 

意見集約難しく

 

 今回の都による公表について、同ビル関係者は「法律に基づくものであると理解しているが、本音を言えばもう少し時間がほしかった。公表の段階で耐震改修に着工していたかった」と漏らす。

 これまでに診断結果を公表した自治体では、倒壊の恐れがあるとされたホテルや百貨店で営業を休止したり、閉店したりする動きが相次いだ。都内の施設も今回の公表で改修や建て替えをするか、閉館するか、事業者は事実上決断を迫られる。

 サブカルチャーの殿堂、中野ブロードウェイは危険性が「ある」と診断された。多数の商店主や居住者が区分所有し、耐震改修をする場合でも意見集約の難しさもある。中野ブロードウェイ商店街振興組合の青木武理事長は「区分所有者が腹をくくって問題に対処するきっかけになれば」と期待する。

 東大生産技術研究所の中埜良昭教授(耐震工学)は「自治体が建物名まで公表する制度は、耐震化の必要性が世の中に浸透した結果ともいえる。解決策がすぐ見つからない事業者も、耐震化を本気で考えなければならないフェーズに入った」と指摘する。

  • 三大都市圏に多く 資金・時間足りず

                情報元 2018/3/30付 日本経済新聞 朝刊

 1981年5月以前の旧耐震基準に基づき建てられた大規模建築物は、都市化が早い時期に進んだ主要自治体に多く集まる。三大都市圏の政令指定都市のうち、大阪市は震度6強から7程度の大地震で倒壊する危険性が「高い」もしくは「ある」物件の比率が21%だった。名古屋市は15%、横浜市が7%となった。

 大阪市は2017年3月、44棟が倒壊の恐れがあると発表した。これを受け、結婚式場「グラン・アーモTAMAHIME」は今春にも、立体駐車場と本館の一部の耐震改修に着手する。

 ただ、こうした耐震補強工事にすぐに動き出せる施設は限定的だ。耐震改修などには費用や時間がかかることもあり、簡単に進まない。

 例えば、17年3月に公表した横浜市の場合、危険性が「高い」「ある」とされたのは34棟。うち民間施設が9割を占めたが、今年3月時点で対応を終えたのは公共施設の1施設のみ。民間施設で耐震補強工事を終えたり、移転したりした施設はゼロだ。対策をしても賃料や販売価格に上乗せするのは容易ではなく、費用負担が所有者に重くのしかかる。

 17年3月に公表した名古屋市では、30棟が危険性が「高い」「ある」とされた。その中には名古屋城の大天守も含まれていた。市によると、18年2月時点では27棟に減った。市は「対応を全く考えていない施設はない」と説明するが、公表から1年を経ても対応を終えた施設は限られている。

 このため、横浜市は従来一括工事のみを対象としてきた補助制度を、4月から段階的な改修工事でも使えるよう適用要件を広げる方針だ。市は「新制度も活用してもらい、耐震化を進めたい」(建築防災課)と、支援策を拡充して対応を促す。

 再開発などで建物の価値を高め、費用を吸収しようという動きもある。名古屋市中心部の老舗百貨店「丸栄」新館は危険性が「高い」と診断された後の17年12月、今年6月に閉店すると発表。跡地は複合施設として再開発する計画だ。